神戸生まれで、神戸をはじめ阪神間を拠点として数多くの設計を手がけておられる瀬戸本 淳氏に、建築家になられた経緯や仕事での面白さについてお話をお伺いしました。
希望と夢を持って再建
この度の東日本大震災により、甚大な被害にあわれました皆様へは、心よりお見舞いもうしあげます。この未曾有の大災害から、被災地の方々が一日も早く、安心して暮らせる日が来ることを心より祈念いたします。
今回の震災で幸せな人々の生活が奪われていく姿を、建築に携わる我々はじっくり見ておかないといけないと思います。知り合いなども困難な生活をしているようですが、そのような中、建築でどのように街を戻していくかは、これから皆で考えていかなければならない課題だと思いますが、希望と夢を持ってまた再建していくものと思います。
・・・神戸の幼少期の思い出は何かありますか?
小学校の友達のお家にお邪魔して遊びに行った時の、そのお家の様子は今でも鮮明に覚えています。一間しかないお家もあれば、今から思えば大豪邸のお家もありますし、殆どは神戸流の独特の玄関を入ったらすぐ横に応接間があってという典型的な町家で、そんな友達のお家に遊びに行くのがとっても好きでした。
お屋敷と言われるお家に遊びに行ったときなど、昔の風情や昔の職人達の建物に対する情熱を感じ取ることが出来、子供の頃から神戸流の住まいというのは勉強になりました。
・・・建築家を目指すようになったきっかけは何かありますか?
神戸高校で美術部に所属していたのですが、先輩たちが建築学科に進んでいる方が多くて、その関係は分からなかったのですが、私も建築学科を受けようと思いました。実は一番行きたかったのは商船大学だったんですけどね。旅行のままならない時代でしたから、船乗りになって世界を見たいと言うのが一番の夢で、その為に試験で体操の懸垂とかあるとの事で一生懸命にやっていました。
それと親戚に医者が多く、友達の誘いもありお医者さんもいいかなぁと思って、京都府立医科大学と神戸大学建築学科を受けて、2つとも受かったので商船大学は受けなかったんですよ。
あの時は医者になるか建築家になるかで悩みましたが、血を見ると卒倒するので神戸大学の建築学科に決めました。(笑)
就職は鹿島建設にしたんですが、一年間いろんな研修を受けていると悩むところが多くなり、知り合いの方の紹介で安井建築設計事務所に入れていただき、8年位楽しい時代を過ごさせていただきました。
30歳の時に独立しましたが、暫くは仕事がなく、安井建築設計事務所に在籍していた頃にお世話になった佐野正一先生より頂戴した“君なら絶対やれる。頑張りたまえ”という言葉がとても励みになりました。
・・・仕事の面白さはどのようなところですか?
私どもの仕事と言うのは、お客様の夢や希望、情熱などを感じ取りながらお話を聞き、それに対して提案していきます。その提案がOKになると資金を出していただける。
我々は提案して喜んでいただけたら、資金を出していただける仕事なので、喜んでいただくために必死にやります。
お客様に喜んでいただくと言うことは、その建物を見た周りの方々も、ひいては社会の方々にも喜んでいただける。
キーワードは“如何に喜んでいただけるか”です。
面白いと思える時は、お客様に喜んでいただいた時と提案を受け入れられた時が嬉しく、建築の面白さでもあります。
・・・もっとも気をつけられている点はありますか?
如何に喜んでいただけるかと言うキーワードのもとに、本当に細かいところが大事です。
手に触るところ、足に触るところなど本当に細かいところが大事で、丁寧に丁寧にもっと丁寧にとの思いで色々気を配っています。
・・・環境問題について特に心がけていることがありましたら教えてください。
新しい工法等、我々も勉強させていただいてはいるのですが、一番大事なのは、永く使っていただくと言うことだと思います。
永く使っていただくために、材料・工法など安心・安全を見据えて使っていただくというところが、本当の環境問題の一番大切な部分ではないかと思います。
色々な技術を取り入れるのも大事なのですが、それが本当に永く使っていただくためにつながるかどうかはいつも検証しながらやらせていただいております。そういう意味では大関化学工業のパラテックス防水は、あの材料が世の中になかったら、建物は本当に短い寿命になっていたと思います。お蔭で土の中の構造物も水が入らず、いつまでも本当に永い間、健全で安心な状態を保っているということから、本当にエコな材料だと思います。これからもパラテックスを様々な建物に使っていきたいと思っています。
[2011.06掲載]
【瀬戸本 淳氏プロフィール】
株式会社 瀬戸本 淳建築研究室 住 所:〒650-0024 神戸市中央区海岸通1丁目1-1 神戸郵船ビル TEL:078-333-0138 ホームページ:http://www.jsao.co.jp |